日頃、皆さまから多くお寄せいただくご質問について、YouTube動画内でお答えしております。今回は『痛みの原因から手術まで!変形性股関節症とは?』というご質問にお答えします。
本編は以下のYouTube動画でご覧いただけます。


変形性股関節症の基本と予防法
Q. 変形性股関節症とはどのような病気ですか?

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とは、股関節の軟骨がすり減ることで関節が変形し、痛みの発生や動きの悪化(可動域制限)を引き起こして日常の生活に不便が生じる病態です。
股関節は、骨盤側の「臼蓋(きゅうがい:関節の屋根となる部分)」と、太ももの骨の先端にある「大腿骨頭(だいたいこっとう:球状の骨)」が噛み合って成り立っています。この骨同士の接触面にある軟骨がクッションの役割を果たしていますが、すり減ることで骨同士が直に負担を受け、痛みが生じます。


Q.どのような人が変形性股関節症になりやすいのでしょうか?

日本では特に「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」や「先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)」の既往がある方に多く見られます。
- 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)
股関節の「屋根」にあたる臼蓋のかぶさりが生まれつき浅い状態のことです。受け止める面積が小さいため、体重による圧力が局所に集中しやすく、軟骨がすり減りやすくなります。日本人に特に多い病態です。 - 先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)
出生時に股関節が外れている(脱臼している)状態です。かつてはおむつの当て方(足を伸ばした状態に固定してしまう布おむつなど)の影響もありましたが、現在は開脚姿勢を促す紙おむつの普及などにより大きく減少しています。


Q.骨がすり減るメカニズムについて詳しく教えてください。

股関節は、屋根である「臼蓋」が球状の「大腿骨頭」をしっかり覆うことで、かかる圧力を全体に分散しています。
しかし、臼蓋形成不全などで屋根が浅いと接触面積が小さくなり、点(ピンポイント)で体重を支えることになります。
その結果、その部分に負担が集中し、クッションである軟骨が急速にすり減ってしまうのです。


Q.股関節を守るための予防法や運動指導はありますか?

若いうちからの筋力維持と、適正体重の保持が重要です。
また、過度な制限をする必要はなく、適切な運動を継続することが推奨されます。
- 適正体重の維持(減量効果)
体重が1kg増えると、歩行時に股関節へかかる負担は3~4倍に増大すると言われています。わずか1kgの減量でも股関節への負担を大きく軽減できます。 - 適度な筋力トレーニングと歩行
お尻の筋肉(大殿筋や中殿筋など)や体幹を鍛えることが有効です。特別なトレーニングでなくとも、1日10分程度の平地歩行や足踏み体操で十分な効果が得られます。 - ジグリング(貧乏ゆすり運動)
小刻みに足をゆするジグリング動作は、股関節軟骨への血流を促し、痛みを軽減する効果が期待されています。 - 痛みのない範囲でのスポーツ継続
痛みを我慢して行う運動は禁物ですが、好きなスポーツを楽しむことは基本的に問題ありません。お風呂上がりなどの膝抱えストレッチも柔軟性維持に効果的です。


症状の特徴と人工股関節手術(早期復帰・脱臼リスク)
Q. 変形性股関節症が進行した際に見られる痛みの特徴は?

動き始めのタイミング(歩き始め、車の乗り降り、自転車の乗り降りなど)に痛みが生じるのが典型的な特徴です。
進行すると、痛みを避けるために無意識にかばう歩き方になり、左右の動きのバランスが崩れて歩行が不自然になります。
本人は無意識でも、ご家族や周囲の方から「歩き方が痛そうだね」と指摘されて気づくケースも少なくありません。
痛みをかばうことで周囲の筋肉や関節自体が硬くなり(拘縮)、さらに左右差が広がるという悪循環に陥ります。


Q. 人工股関節手術(人工股関節置換術)を検討するタイミングはいつですか?

かつては「65歳以上で激しい痛みに耐えられない場合」に検討されることが一般的でしたが、現在は「個人のライフスタイルや目的に合わせて早期に判断する」時代へと変化しています。
- スポーツ復帰や趣味のエンジョイ
ゴルフやテニスを思い切り楽しみたい、旅行で周りと同じペースで歩きたいといったQOL(生活の質)向上のために手術を選択する方が増えています。 - 社会復帰・仕事への早期復帰
40代~50代の働き盛りの世代(特に女性に多い傾向があります)において、痛みで仕事や日常に支障が出る場合、職場復帰を目指して早期に手術を受けるケースが一般的になっています。


Q. 人工股関節の耐用年数はどのくらいですか?若くして受けても大丈夫でしょうか?

インプラントの品質向上により、耐用年数は飛躍的に伸びています。
20年成績:95%~97%の患者さんが問題なく経過
30年成績:約93%の患者さんが良好な状態を維持
このように長期成績が大変良好であるため、40代・50代の若い世代で手術を受けても、将来的な再手術(入れ替え)のリスクを過度に心配する必要はなくなってきています。「痛みを我慢して退職する」のではなく、「手術を受けて社会復帰しバリバリ働く」という選択肢が定着しています。


Q. 「前方アプローチ」と「後方アプローチ」の違いは何ですか?

手術の際に股関節へ到達するためのルートの違いです。
当院では筋肉を切開しない「前方アプローチ(MIS-DAA等)」を採用しています。
筋肉を切らない前方アプローチでは、術後の痛みが少なく回復が早いため、血栓症(静脈血栓塞栓症)や感染症などの二次的リスクを大幅に低減できます。
| 前方アプローチ(当院採用) | 後方アプローチ(従来型) | |
| 筋肉の切開 | なし(筋肉の隙間からアプローチ) | あり(お尻の筋肉を切開・復元) |
| 術後の歩行開始 | 翌日から歩行訓練を開始可能 | 状態に合わせて段階的に実施 |
| 入院期間 | 約1週間前後に短縮 | 3~4週間程度(従来) |
| 脱臼リスク | 筋肉を切開しないため早期の歩行訓練が可能 | 視野が広く安全に展開しやすいのが特徴。筋肉の復元を行うため一定の脱臼予防動作が必要となる場合がある |
| 全身への負担 | 手術時間短縮・出血量軽減により低減 | 相対的に負担が残る可能性 |


Q. 前方アプローチの場合、脱臼のリスクや日常生活の制限はありませんか?

筋肉や腱を切りませんので、日常生活において脱臼を過度に恐れる必要はほとんどありません。
従来の後方アプローチでは「内股にしてはいけない」「屈み込み制限」などの生活指導が行われることがありましたが、前方アプローチでは筋肉を温存するため動作制限は緩和される傾向にあります。患者様の状態や骨の形状に応じて個別の生活指導を行います。
正座、スクワット、ラジオ体操、スポーツ復帰なども安心して行っていただけます。
また、脊柱固定術を受けられた方など骨盤の動きに制限がある患者さんに対しては、脱臼しにくい特殊なインプラントを選択するなど、一人ひとりの解剖学的特徴や生活背景に合わせた最適な選択を行っております。


【人工股関節置換術(前方アプローチ・MIS-DAA等)について】
治療内容
変形した股関節の骨・軟骨を切除し、金属やセラミック製の人工関節に置き換える手術です。
費用
公的医療保険の適用対象となります(高額療養費制度の対象)。
※自費診療となる場合の標準費用も掲載。
主なリスク・副作用
感染症、深部静脈血栓症・肺塞栓症、脱臼、神経麻痺、脚長差、術後出血、インプラントの緩みなど。効果や回復速度には個人差があります。
最後に

手術と聞くと、「怖い」「失敗したらどうしよう」と不安になられるのは当然のことです。前日になると緊張で泣き出してしまう患者さんもいらっしゃいます。
しかし、実際に手術を受けた多くの患者様が、痛みの軽減により日常生活の質(QOL)を向上させ、社会復帰を果たされています。
人生100年時代と言われる現代、老後を笑顔で楽しむこと、行きたい場所に自分の足で行けることはとても大切です。約1週間前後の入院で早期に社会復帰でき、その後20年、30年と健やかな生活を維持できる選択肢が、今の医療には備わっています。
お一人で悩みを抱え込まず、まずは一度、当院へ気軽にご相談にいらしてください。あなたの「もう一度しっかりと歩きたい」という思いに、全力で寄り添わせていただきます。
【股関節の痛みにお悩みの方へ】
東京脊椎・関節クリニック羽田のYouTubeチャンネルでは、脊椎・関節疾患に関する正しい知識と最新の治療情報を、専門医がわかりやすくお届けしております。
ご興味のある方は、下記リンクよりぜひご覧ください。
※本ページは一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を示すものではありません。
症状のある方は医療機関にご相談ください。