変形性股関節症とは
股関節に痛みを感じ、症状が進むほどに可動域が制限されてしまう病気「変形性股関節症」。最初は股関節に違和感がある程度ですが、症状が進行することによって歩くことや爪切りといった日常動作に支障が生じるようになります。さらに進行すると、股関節が変形してしまい、足の長さに左右差が生じるようになってしまいます。(*1)男性よりも40〜50代の女性に多いのが特徴です。
(*1)日本整形外科学会 変形性股関節症
変形性股関節症は、加齢による変化や肥満など体重増加、遺伝など、はっきりとした原因がない「変形性股関節症」と、先天的な病気や後天的な疾患など原因がはっきりしている「二次性変形性股関節症」に分けられます。一次性よりも二次性の割合が高く(*2)、その場合、若い世代でも発症することがあります。
骨盤にあるお椀型をした寛骨臼と言う部分に、太ももの骨である大腿骨頭がはまり込んでいる股関節。寛骨臼と大腿骨頭の間に軟骨があることで、衝撃をやわらげたり、滑らかに関節が動くようになっています。関節包という膜が、関節の周囲を覆い外れないように補強されています。
足の付け根にある股関節は、体の体重を支えるという重要な役割を担っています。
片足で立つと、股関節には体重の3〜4倍ほどの負担がかかります。歩いているときは更に負担が増し、体重の10倍もの重さが股関節へかかっているのです。
それだけの体重を支える股関節だからこそ、この部分に異常が起こると日常生活において様々な影響がでます。
股関節の病気にかかっている人は、全国に400〜500万人いると言われますが、そのほとんどが変形性股関節症と言われます。変形性股関節症になると、骨盤と大腿骨頭の間の部分が狭くなったり変形してしまいます。
股関節は体の中でも深い部分にあるため、症状が自覚しづらい部分です。そのため、違和感や痛みといった自覚症状が現れたときには、すでに症状が進行していることも少なくありません。
治療法としては、基本的に股関節に負担がかからないような生活をするよう心がけます。痛みがある場合は、薬物療法などを併用し、筋力が衰えないように運動療法が取り入れられます。こういった保存方法で症状が改善しない場合、手術療法が検討されます。(*1)
日本人に圧倒的に多いのが二次性変形性股関節症です。なかでも臼蓋形成不全といって股関節を支える屋根の部分(臼蓋)が浅く、骨頭にかかる荷重面積が小さく、軟骨がすり減りやすい状況です。中年期になると加齢による筋力低下や体重増加によって軟骨のすり減りが増し痛みを生じます。
特に働き盛りの女性や出産後に痛みが増してきて社会的損失となっているのが現状です。早期社会復帰を目指すため人工股関節を選ぶ患者さんもおり、今の社会的ニーズに合わせた治療法選択が必要と考えております。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症の主な症状は、股関節の痛みと機能的な障害の2つです。
<症状セルフチェック>
- 歩き始めるとき、太ももの付け根が痛む
- 運動後、太ももの付け根やお尻の横の部分が痛む
- 膝が重い気がする
- タクシーやバスの乗り降り時に太ももの付け根が痛む
- 寝返りをうつとき、太ももの付け根が痛む
- 寝ているとき、股関節の痛みが気になる
- 歩くときに、体が左右に揺れていると言われる
- スカートやズボンの丈に左右差が出ている
- 段差が上がりづらい(地下鉄の階段などがおっくう)
- あぐらをかくのが苦手
- 靴下が履きづらいと感じる
- 足の爪が切りにくいと感じる
- 正座するのが難しくなった
上記のような症状があるときは、まずは一度専門医に相談してみることがおすすめです。
症状の進行は、「前股関節症」「初期」「進行期」「末期」(*3)の4つに分類できます。進行のスピードは、原因や体重、生活環境によって一人一人異なりますが、一度進行がはじまると、2年ほどで一気に軟骨が減っていくため注意が必要です。
(*3)日本股関節研究振興財団 新・股関節がよくわかる本Web版
<前股関節症>
最初はまだ、レントゲンを撮っても軟骨への障害や骨硬化といった症状は認められません。変形性股関節症の原因として、女性に多くあげられる発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)や寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)による骨の形状異常のみ、認められる状態です。
前股関節症と初期では、痛みがないことが多いのですが、この状態で痛みが出始めてから10年以内に初期へ進行すると言われています。MRI検査で調べると関節唇と呼ばれる軟骨に傷害がみつかることもあります。(*3)
<初期>
変形性股関節症初期症状として、立ち上がるときや歩きはじめるときなど、動き始めたときには足の付け根に痛みを感じますが、しばらく歩いていると症状が軽くなっていきます。(*4)
(*4)整形外科シリーズ 変形性股関節症
初期では、関節の隙間がやや狭くなった状態で、すりあわせがわるくなってきます。体重がかかる部分に骨硬化も見られるようになりますが、まだ骨が変形して出来る突起物である骨棘はみられません。5年以内に90%の人が、進行期へと進みます。
この段階では、生活指導や温熱療法、薬物療法といった保存治療が行われます。
<進行期>
歩くときだけでなく、靴下や爪切りなどの日常の動作でも痛みが強くなります。正座や和式トイレなども困難になる状態です。
ほかにも、階段やバスの乗り降りといった日常生活でも支障がでてくるようになり、手すりが必要となります。また、痛みだけでなく、関節の動きも悪くなってきます。
この段階になると関節の隙間が狭くなっていることがはっきりとわかります。さらに、骨棘や骨硬化、関節液などが骨に入ることで骨に穴が開く骨嚢胞も見られるようになります。
保存療法で改善が見込めない場合は、関節鏡下手術で股関節の中を掃除したり、骨切り術で変形した股関節の形を整えるなど、手術療法が検討されます。
<末期>
末期になると、足の付け根が伸びなくなります。膝は外を向いた状態になるほか、左右の足の長さにも差がでるようになるため、ズボンなどの丈があわないようになります。歩いたり動いたりするときだけでなく、安静時にも痛みを感じるようになり、歩くことも困難となります。
この頃になると骨と骨の隙間にある軟骨は完全になくなり、軟骨の下の骨が露出するため、関節の動きがさらに悪くなっています。広い範囲で骨硬化や骨嚢胞、骨棘が見られるのも特徴の一つです。
股関節の破壊が進んだ末期になると、手術療法の中でも痛みを取り、機能改善に優れた人工股関節置換術が検討されるようになります。
変形性股関節症の症状は主に股関節ですが、関連痛として膝関節に痛みを生じる場合もあります。膝のレントゲンでは異常がなく股関節が悪かったといったケースもよく見られます。股関節が悪いと歩き方が異常となり隣接関節障害が起こります。よくあるのは腰椎です。当クリニックでは見落とさないように脊椎と下肢全長のレントゲンチェックを行います。
変形性股関節症の原因
変形性股関節症の約8割は、乳幼児期の股関節の問題から起きていると言われています。しかし、親が覚えていても本人は聞いていない場合も多いので、「聞いたことがないから大丈夫」と安心することはできません。股関節に違和感があるときは、万が一を考えて専門医に相談しましょう。
臼蓋形成不全
骨盤側のくぼみが浅いために、大腿骨頭をしっかり覆うことができない状態を臼蓋形成不全と言います。乳幼児期に診断される際は、特に問題になる症状はない診断名で、多くは自然に改善すると考えられています。
しかし、大人になったときに変形性股関節症の原因となると言われています。(*5)
(*5)日本整形外科学会 臼蓋形成不全
赤ちゃんだけでなく、成長期である中学生頃に女児が強度の高いスポーツをすることで、骨の発育を妨げて臼蓋形成不全になることもあります。
大人になってから臼蓋形成不全を発症した状態は、変形性股関節症の「前関節症」という初期症状の状態にあたります。
骨盤のくぼみが浅いと、大腿骨頭と骨盤の接する面積が小さくなるため、負荷が集中します。その結果、軟骨がすり減りやすくなるのです。
発育性股関節形成不全の後遺症
赤ちゃんのとき、おくるみや厚手の服で動きを制限したり、横抱きすることで足の動きを制限したりすることで、股関節に負担がかかり、脱臼してしまうことがあります。(*6)
かつては出生数の2%前後の子どもに発生していましたが、最近では約0.2%まで減少しています。早期発見により治療することができますが、見落とされると大人になって、変形性股関節症へと繋がってしまうのです。
今と昔では、赤ちゃんに対する抱き方やおむつの形状が異なるため、発育性股関節形成不全や臼蓋形成不全は減っています。そのため、将来的には子どもの頃が原因となる変形性股関節症も減る可能性があります。
加齢
加齢によって軟骨がすり減ることで起こることがあります。女性は筋肉量が少ないため、男性よりも多く起こりやすいと言われています。
肥満
歩くだけで股関節には、体重の10倍もの重さがかかると言われています。そのため、体重が過剰に増えることは関節にとって大きな負担です。
スポーツ、立ち仕事
長時間の立ち仕事をしていたり、アスリートレベルのスポーツを行っている人も変形性股関節症になりやすいと言われています。
先天性股関節脱臼はおむつ指導が周知され減ってきています。それと同時に以前のような高度の脱臼症例は少なくなっております。それとは違い最近は趣味、スポーツ復帰のために手術を行う人が増えてきてます。より生活の質の改善を求める患者さんがいて、我々はその要求に応えていかないといけないと常日頃から感じる次第です。
変形性股関節症の検査・診断
変形性股関節症の検査や診断には、問診や診察の後、レントゲン検査やMRIなどが用いられます。
健康診断などでもおなじみのレントゲン検査(エックス線検査)は、骨の形や軟骨の状態などを調べることができる検査です。
変形性股関節症の進行度合を判断するときにも用いられます。その後の病気の進行や状態を確認するときにも欠かせない検査です。
レントゲン撮影を行い、大腿骨頭と骨盤の間に隙間があれば、股関節の軟骨は正常な状態と考えられますが、変形性股関節症の場合は、隙間が狭かったり、骨硬化、骨嚢胞、骨棘形成といったものが画像に認められます。また、臼蓋形成不全などの有無もレントゲン検査により確認することができるのです。
しかしレントゲン検査で確認できるのは、骨のみになります。軟骨部分は隙間として映し出されるのですが、細かい状態がわかりません。そこで用いられるのが、磁石と電磁波を使って体内を調べるMRI検査です。MRI検査では、骨とあわせて、軟骨や骨髄、関節内の水分増加の状態などのほか、関節の周りにある靱帯や筋肉の状態も確認することができます。
股関節の画像を3Dにして確認できるCT検査も、必要に応じて用いられることがあります。人工股関節置換術の術前計画などにも利用されることがあります。
画像検査は我々にとっても重要な検査です。ありとあらゆる検査を駆使して先ほど説明したように隣接関節障害を見逃さないように一つの関節だけに限らず全身を診るように致します。またエコー検査も重要なツールで、同時に関節内注射も行ったりすることができるので治療といった観点からも有用であると考えております。
変形性股関節症の治療方法<保存的治療法>
変形性股関節症の治療には、大きく分けて保存的治療法と手術療法の2つがあります。まずは、保存的治療法がとられます。
運動療法
筋力が衰えると、歩くことが困難となってしまいます。そのため、筋肉トレーニングや適度な歩行は欠かせません。筋肉トレーニングでは、お尻横の筋肉・中臀筋や股関節まわりの筋肉を中心に鍛えます。また、週2、3回程度、水中歩行や平泳ぎを除く水泳を行うことも有効です。
股関節周囲の筋肉を緩めるストレッチも重要です。筋肉が緩むことで、股関節が動かしやすくなりますし、可動域を広げることにも役立ちます。
ただし、運動をすることで痛みを誘発してしまわないよう、専門家の元、慎重に行うようにします。やり過ぎは禁物。翌日に疲れが残らない程度を目安に、毎日行うと良いでしょう。
また、薬で痛みがおさえられているときに、激しく運動してしまうとかえって悪化してしまいます。痛みを抑えることを念頭に置いた、適切な運動量が重要となります。
薬物療法
痛みが強い場合は、薬物療法がとられます。多く用いられるのは、股関節で起きている炎症をおさえ、痛みを軽減する非ステロイド性抗炎症薬です。内服薬のほか、外用薬や座薬もあります。
非ステロイド性抗炎症薬でも痛みが改善しない場合は、より強い鎮痛剤として麻薬性鎮痛薬(オピオイド)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のデュロキセチンといった薬が処方されることもあります。
徒手療法
理学療法士が直接体を触って関節の動きや筋肉の柔軟性などを改善させる方法です。
物理療法
痛みをやわらげることを目的として、温熱療法が一般的に用いられています。体を温めることで、股関節周りの血の巡りを良くし、痛みをやわらげる方法です。
補助具療法
不安定になってしまった股関節を安定させるために、ヒップ用スプリントという装具を使うこともあります。また左右の足の長さに差が出てしまっているときは、靴のインソールを用いたり、かかとの高さを調整するなどして、姿勢の調整を行います。
生活指導
重いものを持つなど、股関節に負担がかかる作業を減らすようにしたり、肥満と言われた場合は、体重を減らすなど、股関節への負担を減らすための対策を行います。杖を使うこともおすすめです。
保存的治療として運動療法があります。お勧めは水中歩行です。ウオーキングでも構いません。股関節周囲筋(特に大腿四頭筋を)鍛えます。また寝た状態で足を上げ下げする体操も効果的です。大切なのは痛みを我慢してまで無理に運動しないことです。余計軟骨が減ってしまうことがあります。
変形性股関節症の治療方法<手術治療>
保存的治療法での改善が見込めない場合は、手術療法が検討されます。
股関節鏡視下手術
大腿骨頭と骨盤側のくぼみの縁がぶつかることで損傷した部分を再接着させたり、ぶつかりにくいように骨の出っ張っている部分を削り取るのが、股関節鏡視下手術です。
手術の際は、2〜3箇所に1センチ前後の小さな穴を開けて、内視鏡を入れます。関節内をきれいにするだけなら1時間ほど、さらに削る作業が必要な場合は2〜3時間が目安です。手術当日や翌日から、歩行トレーニングを始められます。
関節温存手術(骨切り術)
自分の関節を温存することができる関節温存手術(骨切り術)は、骨の一部を切り取り移動させることで、関節をより安定する形にして再生する手術です。
手術ができるのは、前股関節症から進行期までの状態で、軟骨が十分に保たれている40歳くらいまでの方が対象となります。状態に合わせて、様々な術式が存在しています。
- 棚形成術
少しだけ骨盤側のくぼみが浅くて、大腿骨頭へのかぶりが足りないと判断されたとき、骨を継ぎ足して、かぶりの部分を深くする手術です。
- 寛骨臼回転骨切り術
骨盤側のくぼみが浅いとき、くぼみの周辺の骨を切って回転させることで、大腿骨頭がしっかり覆われるようにする方法です。
- キアリー骨盤骨切り術
初期〜末期まで、幅広い状態の股関節に適応できる術式。関節包の上の部分の骨盤を切り、股関節を骨盤の内側へ移動させることで安定させます。
- 大腿骨内反骨切り術・外反骨切り術
大腿骨の付け根付近を三角形に切り取って、内側に倒したり(内反骨切り術)、外側に反らせたり(外反骨切り術)することで、大腿骨頭の向きを矯正し、骨盤のくぼみにおさめる手術。
例えば、寛骨臼移動術の場合、術後1〜2日はベット上での安静が必要になります。
その後、股関節を動かしたり筋力を付けるトレーニングをしばらく行います。体重をかけるリハビリは、術後3週間後から。入院期間の目安として、手術から退院までおよそ2ヵ月ほどかかります。退院の目安は、杖を使って、階段の上り下りが出来るかどうかです。さらに社会復帰まで3〜6ヵ月ほどかかるのが一般的です。
人工股関節置換術
関節の変形が進んでいる末期では、人工股関節置換術の適応となります。(*1)
人工股関節置換術は、壊れた股関節を人工の股関節に置き換える手術です。その手術数は年々増加しており、2008年には4万件ほどでしたが、2018年には7万件を超える手術が行われるようになりました。
変形性股関節症の大きな症状である痛みから解放されるだけでなく、さまざまなスポーツも楽しめるようになり、QOLの大幅な改善が見込めます。
人工関節の部品として主に使われているのはチタン合金です。可動部分には、セラミックやクロスリンクポリエチレンを用いて、壊れにくいようになっています。耐久性も年々アップしており、今では20年以上壊れることなく使い続けることができます。
人工関節の耐用年数が延びてきたことにより、かつて人工股関節置換術を受けるのは、60〜70代の患者が中心でしたが、比較的若い年齢でも人工関節置換術を選択する人が増えています。
手術では大腿骨頭を切除し、骨の中にステムと呼ばれる棒を入れて、先端に骨頭の代わりとなるボールをかぶせます。骨盤側には半球状のカップを設置します。これらを組み合わせることで、股関節の代わりとなり、足の付け根を動かせるようになります。
人工関節を固定する際は、骨セメントを使う場合と、骨セメントを使わず特殊な加工で固定する場合があります。さらに近年では、筋肉や腱を骨から外さず手術する方法もあり、術後の脱臼リスクも減っています。
手術時間は、通常およそ1時間半ほど。手術翌日には歩くリハビリが始まり、術後10日ほどで退院となります。当院では前方アプローチ法で筋肉を切らずに手術を行うのでリハビリも早く、社会復帰まで1ヵ月ほどです。早期社会復帰が可能な点は人工関節のメリットのひとつといえるでしょう。
費用としては、両端で250〜300万円、片足で150〜200万円ほどです。しかし、高額医療制度も使えるので、上限額を超えた分は払い戻しされます。その場合、食費や差額ベッド代は対象外なので、覚えておきましょう。(*7)
(*7)日本健康保険協会 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
当院では、前方アプローチ法による人工股関節置換術を行っております。
従来の後方アプローチ法は筋肉を切らないアプローチ法です。
従来のように筋肉を切ると術後にダメージがあり回復まで時間がかかってしまったり術後脱臼する恐れがあります。
一方で前方アプローチは、筋肉を切らない方法なので術後早期回復が可能で、さらに脱臼するリスクも回避できます。また前方アプローチは後方アプローチと違って、仰向けで手術を行うので足の長さも反対の足と同じ長さに調節しやすいメリットがあります。
手術後1か月で診療に来ていただいた患者さんの多くが、とても歩く姿がよくなっております。
「周りの人からきれいな歩き方になったといわれてうれしい」、「友達と一緒に旅行しても同じ速さで歩けるようになった」と言って大変喜ばれています。
変形性股関節症の生活上の注意点
変形性股関節症と言われたとき、できるだけ股関節への負担を減らすことが大切になってきます。生活する上でのやりたいこと、やってはいけないことなど、注意事項をまとめました。
和風の生活を見直す
和式の生活は、股関節の負担となるため、ベッドや椅子を用いたり、洋式トイレを利用するなど、ライフスタイルを洋式に変えることも股関節の負担減へと繋がります。
靴もヒールのあるものや底が硬いものを避け、クッション性が高いスニーカーなどを履くようにしましょう。
体を温める
お風呂で39〜40度ほどのぬるめのお湯に浸かることも温熱療法と同じような効果を得ることができます。体を温めたあとに、運動を行うと、より効果的です。
体重管理をする
過体重の場合は、股関節のためにも適正な体重になるようにコントロールすることが必要です。体格指数(BMI)は自分の体重を身長で2回割ったときの数値です。
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
日本肥満学会の基準では、BMIが25以上で肥満となります。そのため、BMI25を切るように体重管理をすると良いでしょう。
歩き方に注意する
歩くときに杖やカートを使うことも、股関節の負担減になります。長距離の徒歩移動や長時間立った状態でいることは、股関節の負担になるため避けた方が良いでしょう。
歩くときはゆっくりとしたペースで。10〜15分に1度は休憩を入れるなど、負担を減らす工夫をしてください。また、持ち歩く荷物は10kg以内を目安に。重いモノはカートを利用したり、ハンドバックよりもリュックを使ったりすることで、股関節への負担を減らせます。
たくさん歩きたいときは、浮力により股関節への負担が軽減される水中ウォーキングがオススメです。
股関節に負担をかけない
先ほど水中ウォーキングがおすすめと紹介しましたが、泳ぐ際は、平泳ぎはNGです。股関節に大きな負担がかかります。
座るときに足を組むことも、股関節をねじる動作となるため、よくありません。正座やあぐらも行わないようにしましょう。
筋トレ・ストレッチをする
筋力が弱らないために、筋トレやストレッチは重要です。簡単にできるものを紹介します。1セット15〜20回、2〜3セット行うのがおすすめです。
- お尻の筋肉を鍛える
仰向けに寝て、膝を立てます。そのままお尻に力を入れて5〜10秒持ち上げてから下ろします。
- お尻の横の筋肉を鍛える
横向きに寝て、床側の膝を曲げます。反対の足を伸ばしたまま5〜10秒あげてから、下ろします。
- 足の筋肉を鍛える
両足を肩幅より広くして立ち、つま先を外に向けてお尻を床と平行になるところを目指して落としていきます。5〜6秒かけて落とし、同じ時間をかけて戻りましょう。机や椅子に捕まって行ってもOKです。
変形性股関節症において運動療法が必要になってくるケースがあります。
痛いのを我慢して運動するとかえって股関節を痛めてしまいます。
そういった場合は早めに股関節専門医の診察を受けて治療または指導を受けるのが得策であると思います。患者さん個々で生活環境が違ってくるのでより的確なアドバイスを求めることができると思います。気軽に相談してください。
股関節に違和感があれば
早めに相談を
歩く、座るといった動作に欠かせない股関節。QOLを維持するためにも、日々、負担がかかりすぎないように気をつけたいところ。腰回りの筋トレは負荷軽減にも繋がります。もし、少しでも股関節に違和感があれば、早めに専門医に相談をしましょう。